
打ち合わせ中の図面を見て、「このリビングなら広々と使えそう」と思っていたのに、家具を置いてみると通路が狭い。椅子を引くと後ろを通れない。置きたい場所にコンセントがなく、配線が目立ってしまう。
こうした行き違いを減らすには、家が完成してから家具を探すのではなく、間取りと家具を同時に考えることが大切です。
造り付けの家具にするか、家具店で既製品を選ぶかは、その次の話。
まずは新しい家で使いたい物と、その場所でどんなふうに過ごすのかを整理してみましょう。
家具のない図面では、暮らしの広さが見えにくい
図面に書かれた部屋の広さと、家具を置いたあとの使える広さは同じではありません。
たとえばダイニングでは、テーブルが置けるだけでなく、椅子を引く場所と、その後ろを人が通る場所も必要です。リビングでは、ソファとテレビの位置によって、窓への通り道や庭の見え方が変わります。
収納家具も、本体の寸法だけでは判断できません。引き出しを手前へ出せるか、開き戸が室内の扉とぶつからないか、上の物へ手が届くか。使うときの動きまで図面に重ねることで、初めて暮らしの広さが見えてきます。部屋を広くする前に、家具を置いた状態で無理がないかを確かめる。これだけでも、面積の使い方を考えやすくなります。
最初に分けたい「持っていく・買う・つくる」
家具計画というと、新しく買う家具ばかりに目が向きがちです。しかし、最初に確認したいのは今の家で使っている物です。
新居にも持っていきたいダイニングテーブル、使い慣れた椅子、思い出のある箪笥。残したい家具が決まれば、その寸法を間取りへ反映できます。反対に、引っ越しを機に手放す物が分かれば、必要以上の置き場所をつくらずに済みます。
そのうえで、新しく買う物と、住まいに合わせてつくる物を分けます。整理するときは、次の四つをメモしておくと便利です。
- 外寸だけでなく、扉や引き出しを開けたときの寸法
- 家族の誰が、何をするときに使うか
- コンセントや配線が必要か
- 将来、場所を動かしたり買い替えたりする可能性があるか
商品がまだ決まっていなくても、「何人で囲むテーブルか」「テレビを置くか壁掛けにするか」といった使い方は考えられます。品番を決めることより、暮らしの前提を設計者と共有することが先です。
造作家具と既製品は、どちらか一方に決めなくていい
造作家具は、壁や柱の位置に合わせて寸法を決められるのが特徴です。キッチン背面のカウンター、テレビボード、壁面収納など、長く同じ場所で使う物は住まいと一緒に計画しやすいでしょう。床から浮かせる、扉を付ける、配線を内部へ通すといった納まりも、設計段階から検討できます。
一方で、模様替えを楽しみたい家具や、暮らしの変化に合わせて買い替えたい物は、動かせる既製品が向いている場合があります。使い慣れた家具をそのまま持ち込むことも、もちろん選択肢です。
ですから、家中の家具を造作にする必要はありません。
判断の目安は、「この場所で長く使うか」「空間にぴったり納めたいか」「将来動かしたいか」。たとえば収納は造作にし、テーブルと椅子は好みの既製品を選ぶなど、組み合わせて考えられます。
費用についても、造作と既製品を名前だけで比べるのは難しいものです。材料、寸法、扉や金物、塗装、設置費、既製品なら配送や組み立てまで、比較する範囲をそろえて確認しましょう。
間取りと一緒に決めておきたい五つのこと
家具の商品を確定する前でも、次の五つは図面の段階で確認できます。
1.通る、座る、開けるための場所
家具の輪郭だけでなく、人が通る幅、椅子を引く範囲、収納扉を開ける範囲を書き込みます。家族が同時に使う朝や夕方の様子を思い浮かべるのがポイントです。
2.コンセントと配線
テレビやパソコン、照明、充電器、調理家電など、家具の周りで電気を使う物を挙げます。家具でコンセントを隠してしまわないか、配線が通路を横切らないかも確認します。
3.窓、扉、空調との位置関係
背の高い家具が窓をふさがないか、室内扉と干渉しないかを見ます。空調設備の点検や掃除をするとき、家具が邪魔にならないことも大切です。
4.収納する物の寸法
「棚が欲しい」だけでなく、本、食器、家電、日用品など、何を置くかまで決めます。収納物が分かれば、棚の高さや奥行き、扉の要否を考えやすくなります。
5.これから変わりそうなこと
子どもの成長、働き方、趣味、家族構成によって、家具の役割は変わります。すべてを将来まで固定するのではなく、余白を残す場所も選んでおきましょう。
鈴木工匠では、家具も暮らしの一部として考えます
私たち鈴木工匠では、間取りだけをつくってから家具を当てはめるのではなく、そこでどんなふうに暮らしたいかを伺いながら、家具や収納、建具も一緒に考えています。
これまでの住まいでは、キッチンの背面に木のカウンターと小棚を設けたり、居間の壁に合わせて長いカウンターをつくったり、畳の居間にテレビボードを納めたりしてきました。ダイニングテーブルや椅子、テレビボード、収納、建具などをご希望に合わせてつくった例もあります。
大切なのは、造作家具を増やすことではありません。何をどこで使い、どうしまい、将来どう変えたいのか。その答えに合わせて、造作、既製品、手持ちの家具を組み合わせることです。
鈴木工匠のオーダーメイドの住まいづくりでは、家具や収納も、使う場所や用途に合わせて幅や高さを調整しています。
家づくりの相談には、家具の写真と寸法を
打ち合わせへ行く前に、今使っている家具をスマートフォンで撮影し、幅・奥行き・高さを簡単にメモしてみてください。残したい物には印を付け、新しく欲しい家具は商品が決まっていなくても用途を書いておきます。
「このテーブルを新居でも囲みたい」
「リビングは将来、模様替えできるようにしたい」
「キッチン家電を表に出しすぎたくない」
こうした希望が、間取りと家具をつなぐ大切な情報になります。
まだ要望がまとまっていなくても大丈夫です。家と家具を別々に考えず、新しい暮らしの全体を一緒に整理していきましょう。

