
7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したことに際し、被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
家づくりに携わる私たちには、地震に強い住まいとは何かを、平時から分かりやすくお伝えする責任があります。
住宅会社の資料では、「耐震等級3」「地震に強い構造」といった言葉をよく目にします。しかし、大切なのは数字の高さだけではありません。その数字がどのような設計と施工によって実現され、完成後も性能が保たれるのかまで確認する必要があります。
今回は、地震に強い木の家を見極めるための5つの視点をお伝えします。
耐震等級は重要。でも、それだけで家の安全性は決まりません
耐震等級は、住宅の地震に対する強さを比較するうえで大切な指標です。住宅会社を選ぶ際には、必ず確認しておきたい項目の一つでしょう。
ただし、耐震等級は家の安全性を構成する一部分です。
同じ耐震等級を示す住宅でも、地盤の状態、基礎の設計、壁の配置、施工精度などは一棟ごとに異なります。また、「耐震等級3」と「耐震等級3相当」という表現が使い分けられていることもあります。
大切なのは、表示された数字だけで判断せず、その根拠と家全体のつくり方を確かめることです。
視点1|耐震等級をどのように確認するのか
最初に確認したいのは、耐震性能の根拠です。
住宅会社には、次のようなことを質問してみてください。
- どのような方法で構造を検討しているのか
- 一棟ごとに構造計算や確認を行うのか
- 第三者機関による評価を受けるのか
- 間取りを変更した場合も再確認するのか
- 「耐震等級」と「耐震等級相当」をどう使い分けているのか
専門用語をすべて理解する必要はありません。
質問に対し、資料や図を使いながら分かりやすく説明してくれるかどうかも、住宅会社を判断する材料になります。
耐震性能は、カタログにあらかじめ印刷された数字ではなく、実際に建てる家の形や間取りに合わせて考えるものです。大きな窓、吹き抜け、広いリビングなどを採用すれば、構造の条件も変わります。
希望する間取りと安全性を、どのように両立させるのかまで確認しましょう。
視点2|建物だけでなく、地盤と基礎まで考えているか
どれほど強い建物を設計しても、それを支える地盤や基礎への配慮が不十分では、安心できません。
土地によって、地盤の硬さや水分量、過去の土地利用などは異なります。同じ地域、同じ分譲地の中でも、調査結果が変わることがあります。
そのため、家を建てる前には地盤調査を行い、結果に応じて基礎や地盤改良の方法を検討することが重要です。
工務店を選ぶ際には、次の点も確認しておきたいところです。
- どの段階で地盤調査を行うのか
- 調査結果を見せてもらえるのか
- 地盤改良が必要になった場合、理由を説明してもらえるのか
- 基礎の仕様をどのように決めるのか
「地震に強い家」という言葉を、建物だけの話に終わらせないことが大切です。
視点3|耐力壁の量だけでなく、配置のバランスまで考えているか
地震に耐えるための壁は、多ければよいというものではありません。
家の一方向や一部分に強い壁が偏ると、地震の際に建物がねじれるような動きをする可能性があります。窓や出入口を設ける場所との兼ね合いもあるため、家全体のバランスを考えなければなりません。
確認したいのは、耐力壁の量だけでなく、
- 建物のどこに配置されているか
- 上下階で力がどのように伝わるか
- 柱や梁、基礎とどうつながっているか
- 大きな開口部の周囲をどう補強するか
という点です。
地震の力は、壁だけで受け止めるものではありません。屋根から壁、柱、床、基礎、そして地盤へと、力が無理なく伝わるように設計する必要があります。
だからこそ、耐震性は一つの部材ではなく、家全体のつながりで考えることが重要なのです。
視点4|どのような材料と構造で揺れを受け止めるのか
鈴木工匠では、木の家の耐震性を支える技術として「どんとパネル」を採用しています。
どんとパネルは、国産の無垢杉・桧材を斜めに張ってつくる耐力パネルです。壁だけでなく、床や屋根にもパネルを配置し、建物全体で揺れを受け止める考え方を採り入れています。
壁倍率は4.2倍、床倍率は3.5倍。合板や集成材とは異なり、接着剤や化学物質を使用しないことも特長です。各住宅で構造計算を行い、上棟後には認定書が発行されます。
参考:鈴木工匠「無垢の木で耐力パネル どんとパネル」
ここでお伝えしたいのは、「この部材さえ使えば絶対に安全」ということではありません。
どんなに優れた部材でも、家全体の設計と正しい施工が伴わなければ、本来の性能は発揮できません。地盤、基礎、木組み、耐力パネル、接合部までを一つの構造として考える必要があります。
鈴木工匠がどんとパネルを採用する理由は、耐震性だけではありません。
家族を地震から守る強さと、化学物質をできるだけ使わない健康住宅の考え方。その両方を諦めないための選択です。
視点5|設計どおりに施工できる体制があるか
耐震性能は、図面を書いた時点ではまだ完成していません。
耐力パネルや金物が指定された位置に取り付けられているか。接合部に施工漏れがないか。柱や梁が正確に組まれているか。こうした現場での仕事によって、設計された性能が形になります。
だからこそ、「何を使うか」と同じくらい、誰が、どのように施工するかが重要です。
鈴木工匠では、普段から家づくりの考え方や施工方法を共有している自社大工が施工を担当します。
無垢材は、一本ごとに木目や性質が異なります。木の癖を読みながら使う場所を判断し、木組みやどんとパネルを精度よく納めるには、大工の経験が欠かせません。
住宅会社を検討する際には、次のような質問もしてみてください。
- 実際に施工する大工は誰か
- 現場ごとに職人が変わるのか
- 設計者と大工はどのように情報を共有するのか
- 建築中の現場を見学できるか
- 完成後の点検や相談には誰が対応するのか
構造見学会や建築途中の現場を見ると、完成後には隠れてしまう部分だけでなく、工務店の姿勢も確認できます。
地震後も暮らしを続けられる家という視点
耐震性を考えるときは、「倒壊を防ぐこと」だけでなく、地震後の暮らしも想像しておきたいところです。
建物にどの程度の損傷が生じる可能性があるのか。点検や補修がしやすい構造なのか。建てた工務店へ相談を続けられるのか。
住宅は、完成して終わりではありません。
年月とともに家族構成や暮らし方が変わり、自然災害以外にも修繕やメンテナンスが必要になります。長く住み続けるためには、直せる材料と構造、そして建てた後も向き合える関係が必要です。
木の家には、傷んだ部分を補修しながら使い続けられる良さがあります。その良さを活かすには、木を理解した職人と、地域で継続して対応できる工務店の存在が欠かせません。
不安に急かされず、平時に確認することが大切です
大きな地震の報道に接すると、自宅やこれから建てる家について不安になるのは自然なことです。
しかし、不安が強いときに、急いで住宅会社や商品を決める必要はありません。
まずは家族で、防災用品や避難場所、家具の固定状況を確認する。家づくりを検討中であれば、住宅会社へ耐震性能の根拠や施工体制を質問する。構造見学会があれば、完成後に隠れる部分を自分の目で見る。
そうした一つひとつの確認が、納得できる住まい選びにつながります。
私たち鈴木工匠も、地震への不安をあおるのではなく、木の家の構造やどんとパネルについて、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと考えています。
耐震等級は、とても大切です。
そのうえで、地盤、基礎、構造のバランス、材料、施工、完成後の対応まで含めて考える。それが、家族を長く守る住まいを見極めるための本当の耐震対策ではないでしょうか。

